低用量ピル、アフターピル、コンドームやIUDなど、避妊の方法は様々です。
しかし、それぞれがどのくらいの避妊率で、どれが効果の高い避妊方法なのかはご存じですか?
今回は各種避妊方法の避妊率を、現役薬剤師がご紹介します。
目次
低容量ピルの避妊率はどれくらいなの?
低容量ピルを服用すると避妊率は?
一口に低用量ピルと言っても、避妊に用いられるものと月経困難症に用いられるものがあります。
適応症が避妊である低用量ピルには、ホルモンの配合量が一定である1相性、配合量が2種類の2相性、配合量が3種類の3相性のものがあります。
国内で一般的に避妊に用いられる低用量ピルには、1相性のマーベロン®やそのジェネリック医薬品、3相性のトリキュラー®やそのジェネリック医薬品があります。
各種低用量ピルの避妊率は、製薬会社の臨床試験段階のデータで下記のように発表されています。
【薬剤名:避妊率(%)】
マーベロン®:99.9%
トリキュラー®:100%※飲み忘れによる妊娠を含むと0.4%の確率で妊娠が成立した。
このように低用量ピルの避妊率は、極めて高いことが分かります。
しかしこれはあくまでも臨床試験をした際のデータです。薬の効果は月経周期や体質などに影響されるため100%の避妊は不可能です。
低容量ピルを飲み忘れると避妊率はどうなるの?
低用量ピルを飲み忘れた場合ですが、マーベロン®やトリキュラー®の添付文書には
経口避妊剤使用開始1年間の飲み忘れを含めた一般的使用における失敗率は9%との報告がある
出所:
と記載されています。
つまり、低用量ピルを飲み忘れると、一般的には避妊率が90%程度に落ちてしまうということです。
アフターピルの避妊率はどれくらいなの?
アフターピルは早く服用するほど、避妊率は上がる?
アフターピルは一般的に、72時間以内に服用することで避妊の効果が得られるものです。
レボノルゲストレル(国内で広く使われているアフターピル、ノルレボ®の成分名)を服用することによる妊娠阻止率は、市販前の海外臨床試験で84%、国内臨床試験では81%と発表されています。
※妊娠阻止率とは避妊をしなかった場合の妊娠率と比べ、どれだけの割合で妊娠を阻止できているかを示す値です。
ノルレボ®の市販後に行われた使用成績調査では、妊娠阻止率は90.8%という結果になっています。
また、アフターピル服用のタイミングと避妊率の関係ですが、ノルレボ®やそのジェネリック医薬品の場合、24時間以内の服用で95%の避妊率、2日以内で85%、3日以内で58%の効果が得られるとされています。
ですから、性行為後なるべく早めにアフターピルを服用すれば、それだけ避妊できる確率も上がると考えられます。
ピルの他の避妊方法にはどんな種類があるの?
コンドームの避妊率はどれくらい?
2016年に一般社団法人日本家族計画協会が行った、日本人の避妊方法に関する調査では、‟82.0%の方がコンドームを使用している一方、その次に多い避妊方法が膣外射精で19.5%、次が基礎体温を測定して排卵日を避けるという方法が7.3%、低用量ピルの服用が4.2%“4)という結果が出ています。
この結果から、国内では大多数の人がコンドームを用いた避妊を行っており、ピルを用いた避妊は少数派であることがわかります。
コンドームの避妊率は一般的な利用方法の場合約85%で、完全な避妊効果があるわけではありません。
ただ、コンドームの効果は避妊だけではなく、性病にかかる確率も下げてくれます。
ですから、コンドームの避妊効果があまり高くないからといって、ピルの服用のみで避妊しようとすることはあまりおすすめできません。
ピルの服用とコンドームの使用を合わせることで、望まない妊娠も性病も防ぐことができるのです。
IUDの避妊率はどれくらい?
IUDとは子宮内避妊具、リングなどと呼ばれる器具のことです。
プラスチック製のリングと、プラスチックに銅線が巻き付けられたリングがあり、銅線のつけられたものはより避妊効果が高いと言われています。
文字通り子宮内にこの器具を入れ、精子と卵子の受精や着床を防ぐことで避妊効果が得られます。
避妊率は約99.4%と言われています。
妊娠の経験がない女性は子宮が開きにくいため、基本的には妊娠経験のある人に用いられる方法となります。
ピルを服用しているとほかの避妊方法は必要ないの?
ピルでは性病は防ぐことができない
性病を未然に防ぐ効果的な方法は、性行為時にコンドームを使用することです。
低用量ピルやアフターピルには、抗菌・抗ウイルスの作用がないため、HIVやクラミジア、淋病、梅毒などの性病を予防・治療する効果はありません。
性病は症状を自覚しにくかったり、無症状であったりすることも多いため、発見が遅れることがあります。
コンドームの使用は、避妊成功率を上げるだけでなく、性病も防ぐことができるので、一石二鳥なのです。
ですから、避妊目的でピルを服用していたとしても、性病を防ぐためにコンドームは使用しておいたほうが良いと考えられます。
まとめ
避妊の方法には、低用量ピルの服用、アフターピルの服用、コンドームの使用、IUDの使用などが挙げられます。
国内で一般的に使われている低用量ピルの避妊成功率は、99.9~100%と発表されています。
アフターピルの避妊成功率は24時間以内の服用で95%、2日以内で85%、3日以内で58%と、性行為から服用までが早いほど高い成功率が見込めます。
多くの人が避妊の方法として用いるコンドームの避妊率は85%ですが、コンドームは性病を防ぐために有効な手段でもあります。
IUDの避妊率は99.6%ですが、適応されるのは基本的に妊娠経験のある女性となります。
避妊を考えている方はこれらの避妊率も参考に、自分に合った方法をとってみてください。
参考文献:
緊急避妊法の適正使用に関する指針|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
ラベルフィーユ21錠/ラベルフィーユ28錠|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
マーベロン添付文書・インタビューフォーム| 独立行政法人医薬品医療機器総合機構
トリキュラー添付文書・インタビューフォーム|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
ノルレボ錠 添付文書・インタビューフォーム|独立行政法人医薬品医療機器総合機構