全ての薬には主作用と副作用があり、ピルも例外ではありません。
ピルの内服を開始する前にこの2つの作用を確認しておくことは大変重要です。
今回はピルの副作用について詳しくご紹介します。
ピルで副作用が出現した場合の対処方法にも言及しようと思います。
ピルの副作用について詳しく知りたい方は是非お読みください。
目次
低用量ピルの副作用
低用量ピルの副作用はマイナートラブル(重大ではない問題)とされることもあります。ですが、服用する以上、副作用のリスクが全くないという訳ではありません。
低用量ピルを服用することで発現する可能性のある副作用の種類について解説します。
低用量ピルのよくある副作用はどんなものか
低用量ピルの服用による主な副作用は下記の通りです。
- 不正出血
- むくみ
- 吐き気
- 血栓症
- 腹痛
もっとも経験する人が多い副作用が不正出血で20%の人が経験しています。他に、体重増加や気分の変調を経験する人がいることが報告されていますが、低用量ピルの服用とそれらの症状との間に因果関係はありません。
低用量ピルの副作用はいつからいつまで続くのか
ピルの飲み初めに上記の副作用が発現した場合でも、服用を始めてから2~3か月で減少することが多いです。
ピルの副作用と思われる不調があった場合は医師に相談しましょう。
重篤なピルの副作用として血栓症がありますが、詳しくは後述します。
低用量ピルは子宮がんや乳がんへの影響もあるのか
子宮がんは子宮に発生する悪性腫瘍の総称で、子宮の入り口にできる子宮頚がんと、子宮の奥部にできる子宮体がんに分類されます。
子宮頚がんは低用量ピルの長期服用により、発症率がわずかに高まるとされています。
このため、長期的に低用量ピルを服用する場合には、定期的に子宮頸がんのスクリーニング検査を受けることが推奨されます。
一方で海外の研究では子宮体がんは低用量ピルの長期服用で50%リスクが減少することがわかっています。また、同じ研究で低用量ピルの服用がわずかに乳がん罹患率を高めることも指摘されています。
低用量ピルのがんへの影響について、詳しく解説します。
低用量ピルはなぜ子宮がんや乳がんへ影響があるのか
子宮頚がんに罹患する人の95%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。
ヒトパピローマウイルスに感染した状態で低用量ピルを服用した場合は、ウイルスの排除率が低下するといわれ、発症率がわずかに高まるとされています。
子宮体がんの発症については、エストロゲン(卵胞ホルモン)との深い関連性が指摘されています。
体内のエストロゲンの値が高い状態が続くと、子宮内膜増殖症ののちに子宮体がんを発症することが研究によって明らかにされています。
ピルは端的にいうとホルモン剤で、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つのホルモンが主成分です。
プロゲステロンには内膜腺細胞の増殖を抑制する働きがあります。
その結果子宮体がんのリスクを下げることに繋がります。
乳がんについてはわずかにリスクを高めている可能性が指摘されているのみで、詳しいことは2021年現在わかっていません。ただし、乳がんは全体の60~70%が女性ホルモンの影響を受けやすいと言われています。
子宮がんや乳がんになる可能性
日本産科婦人科学会によると毎年1万人の人が子宮頸がんに罹患しています。
子宮頚がんを発症する原因として考えられるヒトパピローマウイルスは、性交渉の経験がなければ発症することはほぼありません。
ただし、数パーセントの確率でヒトパピローマウイルスや生活習慣と関係のない発症も報告されています。
子宮体がんは全国で毎年1万6000人程度の人が診断されます。
子宮体がんは閉経前後の女性に多いとされています。診断されるピークは50代60代の人です。
近年子宮がん全体に対する子宮体がんの割合は増加傾向で、女性の初産の高齢化や未経産の女性の増加が要因として考えられます。
乳がんは性別関係なくどの年代の方でも発症する可能性があります。
2019年の日本女性の罹患率第1位が乳がんで、患者数は年々増加しています。
子宮がんや乳がんの対処法について
子宮頚がんはヒトパピローマウイルスに感染することで罹患することがほとんどです。
子宮頚がんワクチンを打つ、定期的に子宮頚がん検診を受ける、性交渉時のコンドームの着用などが対策として挙げられます。
子宮体がんの代表的な対策としては、低用量ピルの服用が挙げられます。
乳がんの発症率を低くするには主に生活習慣の改善が効果的とされ、過度なアルコール摂取を避けたり、肥満にならないようにすることが重要です。
いずれのがんに関しても定期的な検診を受けることが推奨されます。
血栓症 -低用量ピルの重大な副作用-
低用量ピルの副作用のうち、重篤なものとしては血栓症が挙げられます。
本章で血栓症について詳しく解説します。
血栓症とはどんな病気なのか
まず血栓とは血液のかたまりのことを指します。
血栓症とは血液中にできた血栓が血管を詰まる病気です。
どこの血管が詰まるかによって病名が変わってきます。血栓症のうち、血流の速い部分で起こる血栓症のことを動脈血栓症、血流の緩やかな部分で起こる血栓症のことを静脈血栓症と呼びます。
動脈血栓症として代表的な病気は脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈血栓症などが挙げられます。
静脈血栓症は肺栓塞、深部静脈血栓症などが代表例です。
ピルの服用は副作用として血栓症のリスクを増大させることが明らかとなっています。
特に低用量ピルを服用していて下記のような症状があった場合には必ず医療機関へ相談してください。
- 手足の麻痺・痺れ
- 話にくいように感じる
- 胸の痛み
- 呼吸困難
- 片方の足の痛みや痺れ
低用量ピルを飲むと血栓症になりやすくなる仕組み
低用量ピルを服用すると、副作用として血栓症のリスクが上がると言われています。
血栓症の発症のリスクは、ピルに含まれているエストロゲン(卵胞ホルモン)の量に比例すると考えられています。
ピルの種類にはエストロゲンの含有量によって中用量ピル、低用量ピル、超低用量ピルと分類されます。
もちろん、ピルのエストロゲン含有量によって副作用だけでなく、期待できる効果(主作用)の程度も変わってきます。
血栓症になる可能性はどれくらいあるのか
健康な女性であれば、低用量ピルの副作用として血栓症を起こす可能性は1万人に1人の確率です。
また喫煙者や基礎疾患のある方は血栓症をはじめとしたピルの副作用に注意が必要です。
血栓症の予防について
ピルの服用の有無にかかわらず、長時間同じ姿勢だったり、水分をとらずに脱水ぎみであったりすると血栓症になりやすいとされています。
疲労やストレスが溜まっている場合も同様です。このような状態にならないように心掛けましょう。
また、普段から生活習慣病にかからないようにすることが大切です。規則正しい生活、適度な運動、栄養バランスを考えた食事を心がけましょう。
タバコを吸っている方は死亡リスクもあるので服用を取りやめるか禁煙するかが推奨されます。
まとめ
いかがでしたか?今回は低用量ピルの副作用について徹底解説させていただきました。
ピルに重篤な副作用があると聞くとなんだか怖いイメージを持ってしまいますが、副作用が発生しやすい条件や確率を知ることで、ピルに対して間違った認識を持つことを避けられます。
ピルの主作用と副作用について正しく理解され、皆さんのご不安やお悩みが解消されることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献:
総説1日本人女性の乳癌罹患率,乳癌死亡率の推移|日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン
子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために|公益財団法人日本産科婦人科学会
低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン案|公益社団法人日本産科婦人科学会
明日から実践できるOC/LEP処方|日本プライマリ・ケア連合学会
Hormonal contraception and risk of cancer|Human Reproduction Update