ピルは女性主体で避妊できるだけでなく、生理痛の軽減や美肌効果が期待できるなど、女性にとってメリットの多い薬です。
しかしピルは、れっきとした医薬品です。
薬である以上、副作用があります。
ピルの副作用には、頻度は低いですが放置すると命に関わるものも存在します。
ピルを飲む前に副作用についてしっかり知り、病院を受診するべきか判断できるようにしておきましょう。
目次
ピルの副作用とは
最初にお伝えしておくと、ピルは特に危険な薬というわけではありません。
ただ、ピルによる副作用が出やすいのは事実。
なぜかというと、不正出血が副作用に含まれているからです。
危険な副作用が多い薬というわけではないので、安心してください。
ピルの副作用の種類
ピルの主な副作用には、以下のものがあります。
ピルの重大な副作用
- 血栓症(頻度不明)
- アナフィラキシー(頻度不明)
ピルのその他の副作用
- 頭痛(15.5%)
- 吐き気(17.9%)
- 不正出血(60.0%)
- 月経の遅れ(14.1%)
- その他月経周期の乱れ(5%以上)など
※頻度はルナベル配合錠LDによるもの
発生頻度は低いですが、めまいやふらつき・血圧上昇・胃痛などの報告もあります。
その他コルチゾールや甲状腺ホルモンの検査値が上昇することがあるため、血液検査を受ける際にはピルを飲んでいることを伝えましょう。
ピルの副作用が出やすい時期
薬を飲んでいる限り、副作用が起きるリスクがあります。
薬によっては、副作用が起きりやすい時期が存在します。
ピルも副作用が発生しやすい時期がある薬なので、覚えておきましょう。
ピルの副作用は1~2ヶ月目が出やすい
ピルによる副作用の大半は、急激なホルモンの変化に身体がついて行けないためです。
低用量ピルを飲むことで、体内のホルモンバランスが妊娠中に近い状態となります。
それにより脳が妊娠と勘違いをして、「つわり」に似た症状が出ます。
そのためピルの飲み始めから数日は、吐き気やめまいなどの症状が出やすくなります。
加えて、ホルモンバランスの調整期間である1~2か月間は不正出血など副作用が起きやすい時期です。
以下で解説する血栓症もピルの飲み始めに起こりやすい副作用なので、兆候をしっかり覚えておきましょう。
ピルの副作用で注意が必要なものは
ピルを飲むことで起きる副作用のうち、対処方法に注意が必要なのは2つ。
それは「不正出血」と「血栓症」です。
ピルの効果を発揮させるため、そして健康を守るためにも以下を覚えておきましょう。
不正出血とは
不正出血とは、生理以外で起きる全ての出血のことです。
ピルを飲んでいる間の不正出血は、決して珍しいことではありません。
低用量ピルであるルナベルLDでは60.0%、超低用量ピルのルナベルULDでは81.1%の方に不正出血が起きています。
ピルによる不正出血は、基本的に薬をやめる必要はありません。
低用量ピルを飲んで不正出血が起きても、自分の判断で飲むのを止めないようにしましょう。
日本産婦人科学会のガイドラインにおいても、ピルの服用開始から3か月間は不正出血が起きても服用を止めずに様子を見ることが推奨されています。
ピルを飲むのを止めてしまうと、避妊効果も得られなくなります。
不正出血が不安な場合は、ピルの服用を続けたまま病院で相談しましょう。
血栓症とは
ピルの副作用のうち、最も重大な副作用は静脈血栓症(VTE)です。
血栓症とは、何らかの原因で血管内の血が固まり血管を詰まらせることです。
発見時期や詰まった箇所によっては、命に関わる可能性もあります。
海外の調査では低用量ピル服用者1万人に対し、3~9人に血栓症が起きました。
これはピルを飲んでいない人に比べると、2~6倍の発生リスクです。
血栓症はピルの服用開始から3か月以内に起こることが多く、その後の発生率は低くなって行きます。
ピルの飲み始めは血栓症の兆候である、強い頭痛や吐き気・胸や足の痛み・目がよく見えないなど症状に注意し、気になる症状があればすぐに病院に連絡しましょう。
ピルの副作用はピルを飲み忘れるとどうなる?
低用量ピルは飲み続けることで、妊娠中と似たホルモン値を維持します。
そして休薬期間を設けることでホルモン値を下げ、生理を起こすという仕組みです。
つまり飲み忘れがあると休薬以外でホルモン値が下がってしまい、出血が起きてしまう可能性が高まります。
不正出血という副作用リスクを下げ、避妊効果を十分に得るためにも、できるだけ飲み忘れないように気を付けましょう。
ピルの副作用はピルを飲み続けたらどうなる?
ピルを飲み続けることで、副作用リスクが高まるという報告はありません。
逆の多くの副作用は、前述のように飲み始めに起きています。
血栓症リスクと体調のチェックのため、6か月おきに病院で定期健診を受けるようにしましょう。
ピルの副作用に特に気をつけるべき人は?
ピルによる血栓症の発症率は、0.03~0.09%とかなり低いものであり、過剰に心配する必要はありません。
ただし中には血栓症になりやすい方がいるので、注意が必要です。
年齢による注意点
血栓症の発症確率は、年齢と共に上がっていきます。
30~34歳の血栓症リスクと比較して、35~39歳で1.18倍、40~44歳で1.57倍、45才歳以上では2倍を超えます。
40歳を超えてピルの服用を検討する方は、年齢以外の血栓症リスクも踏まえて医師とよく話し合うようにしてください。
家族に血栓症になった人がいる場合はさらにリスクが上がるため、IUS(ミレーナ)など別の避妊方法も検討しましょう。
生活習慣による注意点
加齢のほか、ピルによる血栓症リスクが上がるのは以下です。
- 肥満
- 喫煙者
BMIが25の人で血栓症リスクが2倍に、BMI30を超えると血栓症リスクは5倍となります。
BMI30以上の方には、ピルを処方しない場合もあります。
35歳以上で1日15本以上喫煙する方は、ピルを飲むことができません。
ピルを飲みたい方は、減煙や禁煙を検討しましょう。
また、長時間座っていると血栓症のリスクが上がります。
デスクワークの方や長時間乗り物に乗るときは、定期的に足を動かしたり小まめに水を飲むことが大切です。
ピルの副作用:病院にいった方がいい場合とは
ピルによる吐き気など不快感の多くは、服用開始から数日以内に改善が見られます。
強い頭痛など耐え難い症状がある場合や、3か月以上不快感が続く場合は病院で相談してください。
不正出血は前述のとおり、すぐに受診する必要はありません。
3か月以上不正出血が続く場合や、1か月以上出血が止まらない場合は受診しましょう。
また副作用の発生に関わらず、ピルの服用中は6か月に1回の定期検査と1年に1回の子宮がん検診を受けてください。
受診する時は、ピルの服用を伝えましょう
ピルと一緒に他の薬を飲むと、ピルや別の薬の効果が強くなったり、弱くなって効果が得られないことがあります。
また、手術の際には血栓症リスクを考慮して一時的にピルの服用を止める必要があります。
検査値がピルの服用で変動することもあるため、病院を受診しているときはピルを飲んでいることを必ず伝えるようにしてください。
まとめ
ピルには不正出血や頭痛・吐き気など、副作用が発生するリスクがあります。
しかし多くの副作用は、服用開始から3か月以内に改善するものです。
重大な副作用として血栓症がありますが、その死亡率は年間10万人に1人であり、妊娠による死亡(10万人に8人)よりも低いものです。
血栓症の兆候には十分注意をしつつ、ピルを正しく使って安全に避妊をしたり生理痛を改善させましょう。
不安な症状が続く場合には、オンライン診療なども利用して早めに医師に相談するようにしてください。