女性の毎月の悩みといえば、生理前のや生理中のさまざまなトラブルですよね。イライラや生理痛など、さまざまある生理に関するトラブルのある方に処方されるのが、低用量ピルです。避妊のためだけのものと思われがちですが、月経困難症や月経前症候群などの治療に用いられる薬です。
しかし、ピルを服用する際に気になるのは副作用ですよね。「ピルを飲むとうつになる」と聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。本当にピルを服用するとうつになってしまうのでしょうか?
これからピルとうつの関係について、詳しくお話していきます。また、ピルを服用することで現れる副作用や、副作用を抑える方法についても詳しく解説していきます。ピルの服用を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ピルの副作用により、うつは発生するのか?
では、ピルを飲むことでうつ状態になるのでしょうか。詳しく解説していきます。
ピルの服用によりうつになるのか?
ピルを服用するとうつになるのかという研究が、数年前デンマークで行われました。その内容は、ピルを服用している人とそうでない人の自殺率について調べたというものです。ピルを服用している人はこれまで一度ピルを服用していない人に比べて、自殺未遂のリスクが1.97倍程度という報告がされています。しかしながら、うつ症状など、服用した人の気分と低用量ピル服用との間に因果関係は見出されていないのです。
なぜピルを服用するとうつが起こる可能性があるのかは、いまだにわかっていません。これについては、ピルに含まれる女性ホルモンであるエストロゲンが関係しているという説がありますが、研究の結果が一致せず結論は出ていないのです。
ピルとうつをはじめとする向精神薬の飲み合わせは?
ピルを服用すると、同時に服用している薬の作用を高めてしまう場合があります。それは向精神薬の中でも、三環系抗うつ薬という種類です。三環系抗うつ薬の主な商品名は、以下の通りです。
- アモキサン
- トリプタノール
- スルモンチール
- アナフラニール
- プロチアデン
- ノリトレン
- トラフニール
- アンプリット
なお、三環系抗うつ薬にはジェネリック医薬品もあるので、上記で挙げた以外の名前のものもあります。抗うつ薬を普段服用されていてピルを検討している方は、まずは抗うつ薬を処方している主治医に必ず相談しましょう。
ちなみに、逆にピルを飲むことで効果が弱まってしまう薬もあります。その薬は抗てんかん薬です。フェニトインやカルバマゼピンといった抗てんかん薬を服用している方も、低用量ピル服用やアフターピルの検討している場合は必ず主治医に相談してくださいね。
低用量ピルの副作用とは?
ピルを服用すると起こる可能性のある、うつ状態についてお話ししましたが、他にはどんな副作用があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
低用量ピルの副作用はなぜ起こる?
ピルは女性ホルモンである、エストロゲンやプロゲステロンが含まれています。そのため、服用することで体内のホルモンバランスが変わり、その変化に体が慣れていないことで副作用が起きると言われています。
低用量ピルの副作用にはどんなものがある?
低用量ピルを飲むことで起こる主な副作用は、以下の通りです。
- 血栓症
- 吐き気
- 胸が張る
- 不正出血
- 頭痛
- 下腹部痛
- むくみ
- 眠気
「ピルは太る」と思われがちですが、ピルにはそういった作用はないと考えられています。しかし、むくみが出ることがあるため、むくみによって太ったと感じる可能性があります。また、ピルに含まれるプロゲステロンが食欲を高める作用があると考えられており、ついつい食べ過ぎてしまって太ってしまうということもあります。
低用量ピルの重大な副作用、血栓症
低用量ピルを飲むにあたって、気にしておきたい副作用が血栓症です。
血栓症とは、血管の中に血の塊ができて、血管を詰まらせて血流を止めてしまう病気のことです。血栓症の中でもさまざまな病気がありますが、よく聞くエコノミークラス症候群も血栓症の1種です。
ピルを服用することによって、血栓症が起こるリスクは服用していない人の3~6倍になるとも言われています。また、血栓症は飲み始めてから1~3ヵ月の間に起こることが多く、それ以降は減っていきます。
こう聞くとピルを服用するのが怖いと感じてしまうかもしれません。
血栓症が起こる確率は、10万人に1人と言われています。血栓症になる可能性を忘れずに、ピルの飲み始めは体の変化に注意しておきましょう。
服用直後に以下のような症状が出たら、血栓症の疑いがあるため、急いで病院を受診してください。
- ふくらはぎの痛み、
- 手足のしびれ
- 胸の痛み
また、BMI25以上の肥満体型の方や、喫煙する方はピルを飲むことで血栓ができるリスクがより高まるので、処方してもらえないことがあります。
ピルの副作用はどんな時に発生するの?
ピルの副作用はどういうときに起こるのか、気になりますよね。以下で詳しくお話していきます。
ピルの飲み始めに副作用が起こることが多い
ピルの副作用は、飲み始めて1~3ヵ月の間が一番多く起こります。多くの場合、飲み続けていくことで副作用は減っていきますので、まずは3ヵ月服用を続けましょう。
もし、3か月経っても副作用が収まらない場合は、医師に相談しましょう。
ピルを飲み忘れた場合は副作用は現れるの?
ピルを飲み忘れた際に起こりやすい副作用が不正出血です。
1日飲み忘れたことに気付いた場合は、その場で1錠飲み、その次は通常の時間にいつも通り1錠飲みます。
2錠以上の服用を忘れてしまった場合、飲み忘れた錠剤の中で直近のピルをその場で飲み、残りは通常通り服用しましょう。
ピルの副作用を抑えるためには?
最後に、ピルの副作用を抑える方法についてお話していきます。
ピルの種類を変更してみる
ピルを飲んでいて副作用が気になる場合は、医師に相談して種類を変えてもらうのも1つの方法です。ピルは主に以下のものが使われます。
- ヤーズ
- ヤーズフレックス
- トリキュラー
- マーベロン
- ファボワール
- ルナベルLD、ルナベルUDL
- ジェミーナ配合錠
ピルにはさまざまな配合方法や服用方法あり、人によって合う・合わないがあります。ピルのことで気になったら、まずは医師に相談してみることをおすすめします。
ピルの服用方法を変更してみる
吐き気や眠気などの副作用が気になる場合は、服用のタイミングを変えると改善される可能性があります。
空腹時や朝の時間帯は、服用を食後や寝る前に変更してみたりといった変更です。
それでも改善されなければ、医師に相談しましょう。
まとめ
ピルを服用するにあたって、気になる副作用であるうつについてご紹介しました。また、他の副作用や、副作用を抑えるためにできることについてもお話ししました。
ピルの副作用にフォーカスされがちですが、服用することで月経のコントロールができたり、子宮内膜症が改善されたりとメリットもたくさんあります。
生活の質の向上を手助けしてくれる期待があるものなので、生理で生活のしづらさを感じている方は、ピルの服用を検討してみてください。
参考文献:
経口避妊薬と抗てんかん薬について|静岡てんかん・神経医療センター
低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)|低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤のガイドライン作成 小委員会