ピルとは、正しく避妊ができなかったときに飲み、妊娠率を下げる薬のことです。
確実に妊娠を防げるわけではありませんが、飲まないときに比べて妊娠する確率は低下することが確認されています。
日ごろ気を付けていても、避妊に失敗してしまうことはあります。
アフターピルについては妊娠を望まない女性とって、知っておいて損がない知識です。
ここではアフターピルが妊娠を防ぐ仕組み、そして入手方法などをお伝えします。
目次
アフターピルとは何なの?
市販化を求める署名の動きもあり、テレビやニュースサイトで「アフターピル」の名前を聞くことが増えましたね。
まずはアフターピルがどんなものか、詳しく解説します。
アフターピルとは緊急避妊薬のこと
緊急避妊薬の別名を、アフターピルと言います。
緊急避妊ピル(EC)・モーニングアフターピルと呼ぶこともあります。
緊急避妊薬は避妊に失敗した性交の後に飲むことで、妊娠の確率を下げる薬のことです。
最も有名なアフターピルはノルレボ錠という名前で、1999年にフランスで商品化されました。
日本で承認されたのは、2011年2月です。
日本だとまだ新しい薬のように感じますが、世界的に見ると20年以上も使われている薬ということですね。
アフターピルはなぜ避妊効果があるの?
毎日飲むピルもアフターピルも、どちらも女性ホルモンが入っている薬です。
アフターピルは女性ホルモンを一気に身体に入れることで、身体を妊娠しにくい状況にします。
アフターピルの避妊効果の仕組み
- 排卵を遅らせる
- 着床しにくくさせる
- 卵子の輸送を妨げる
- 受精しにくくさせる
万が一すでに排卵していても妊娠を抑制する効果が期待できます。
アフターピルは本当に効果があるの?
アフターピルを飲めば避妊できると言っても、100%避妊できるわけではありません。
高い避妊効果を得るにはアフターピルの効果は時間経過によって変わることを覚えておくのが大切です。
アフターピルはどのくらい避妊効果があるの?
アフターピルは通常、妊娠が疑われる性交から72時間に服用します。
したがってアフターピルの効果は、性交後72時間以内に服用した場合の結果を判定します。
国内で最も使われている、ノルレボ錠の試験結果が以下です。
性交後72時間以内に0.75mg製剤2錠(レボノルゲストレルとして1.5mg)1回経口投与した結果、解析対象例63例のうち、妊娠例は1例で、妊娠阻止率(※)は81.0%であった。
※妊娠阻止率…月経周期日ごとの妊娠確率から求めた妊娠予定数を用いて算出した値で避妊率とは別です。
63人中妊娠したのは1人なので、約98.4%の人は妊娠しなかったということです。仮に排卵日の前後で避妊失敗した場合、アフターピルを飲まないと20~30%の確率で妊娠成立します。
アフターピルは時間が経てば避妊効果が下がる?
アフターピルの服用により、性交から72時間以内に飲めば、高確率で妊娠を防げます。しかし性交から服用までの時間が経つほど、避妊効果が下がります。なぜならアフターピルの効果が出るまでの間に、妊娠が成立してしまう可能性があるからです。
ノルレボ錠によるアフターピルの効果は、おおよそ性交後24時間以内の服用で避妊率99%、48時間以内の服用で98%、72時間以内の服用で97%です。
避妊の成功率は使用した女性の排卵タイミングによるため、上の避妊率が必ず当てはまると言えません。
できるだけ、排卵が起きる前にアフターピルを飲むのが望ましいとされます。
ただ72時間を過ぎたからと言って、避妊効果がなくなるとはいわれていません。
アフターピルの効果は急になくなるわけではなく、徐々に低くなります。
仮に性交から72時間が過ぎても、妊娠を望まないならアフターピルを飲まないより飲んだ方が避妊できる確率は上がると考えられます。
後ほど紹介しますが、性交後120時間まで避妊効果が変わらないアフターピル(エラワン)も存在します。
アフターピルには副作用がある?
アフターピルは医薬品です。どのような医薬品にも副作用が起きる可能性があります。アフターピルの副作用や、対処方法について覚えておきましょう。
アフターピルの副作用にはどんなものがあるの?
アフターピルは副作用が出やすい薬です。ノルレボを服用した7割の方に副作用が出ています。
多くの方が経験するのは消退出血や不正出血です。消退出血は、約46%の方に出現しています。
他に現れやすい副作用は、頭痛や眠気・吐き気などです。多くはありませんが、めまいや腹痛の報告もあります。
既往歴(過去の病歴)や体質などに鑑みてリスクが小さいと医師が判断した方については、命に関わる副作用はほとんどでていません。
アフターピルは他の薬と比べて特別リスクの大きい薬というわけではなく、比較的安全に使用できる薬といえます。
例外として心臓や肝臓・腎臓に持病がある方は、アフターピルの服用で持病が悪化する可能性があります。また服用している薬なども影響
治療中の病気がある方は、アフターピルの服用について主治医に確認しておきましょう。
アフターピルの副作用はいつからいつまでなの?
消退出血や不正出血などの出血は、次の生理予定日まで起こる可能性があります。月経周期も代わり、16%の人が服用後、1週間以内に出血しています。
出血以外の吐き気や眠気・頭痛などの副作用は、通常服用から24時間以上続くことはありません。
アフターピル服用後の体調不良が1日以上続く場合は、処方した医師に相談してみましょう。
もしアフターピルを飲んだ後に吐いてしまったら、十分な避妊効果が得られない可能性があるので、すぐに処方した医師に連絡してください。
アフターピル服用後生理はいつくるの?
アフターピルを飲んでも、確実に避妊できるわけではありません。避妊に成功したかどうかは、生理が来るかが1つの目安となります。
アフターピルの服用後生理はいつ来るの?
アフターピルを飲んでから、生理が来るまでは通常1~2週間です。
またアフターピルを飲んでから3日~1週間程度で、消退出血が出る方もいます。
消退出血は生理とは違い、2~3日で出血が止まるのが特徴です。
生理か消退出血のどちらかが起これば、妊娠していないと考えて差支えありません。
1日程度で出血が収まる不正出血は、必ずしも避妊できたことを意味しないので注意が必要です。
生理予定日1週間後からは妊娠検査薬で、生理予定日からは早期妊娠検査薬で妊娠の有無が確認できます。
アフターピルの服用後生理がずれる?
アフターピルは、多量の女性ホルモンを体に取り入れる薬です。そのため、生理周期が通常とずれてしまうことがあります。
アフターピル服用後は、通常の生理日よりも早く生理が来たり、遅く生理が来ることがあります。
アフターピルを飲んでから3週間経っても生理が来ない場合は、妊娠を疑って病院を受診してください。
出血期間が短く生理が起きたか自信がない場合も、病院を受診もしくは妊娠検査薬で妊娠しているかチェックしましょう。
アフターピルにはどんな種類があるの?
アフターピルと呼ばれる薬は、現在3種類存在します。
1つは、これまでに何度かご紹介したノルレボ錠です。もう1つは最新のアフターピルの一つである、エラワン(ella one)です。
プラノバールという薬などを4錠飲むヤッペ法という緊急避妊法もありますが、吐き気の副作用が強く避妊率も低いため現在はあまり使われません。
72時間以内で効果が高いノルレボ
ノルレボ錠はレボノルゲストレルという成分の薬で、緊急避妊薬として日本で最も使われている薬です。
ノルレボ錠のジェネリック薬も、2019年に国内で承認されました。
海外では、市販薬として薬局で購入も可能な安全な薬と考えられています。国内でも多くの病院で、処方してもらうことができます。
性交から72時間以内に服用することで、高い避妊率を発揮できます。
アフターピルの処方は自由診療のため病院によって値段が違いますが、ノルレボで9,000~15,000円、ノルレボのジェネリックで6,000~10,000円ほどです。
120時間以内でも効果があるエラワン
現在最新のアフターピルが、主成分ウリプリスタール酢酸エステルのエラワンです。
単に「エラ」と呼ばれることもあります。日本では未承認ですが、ノルレボより避妊率が高いことから、海外ではすでに主流のアフターピルとして使われています。
エラワンはノルレボのように、性交から時間が経過しても避妊率がほとんど低下しません。
国内未承認のため取り扱いのあるクリニックが限られており、費用も高いことがデメリットです。
エラワンも病院によって料金が違いますが、13,000~17,000円ほどかかります。
アフターピルはどこで処方してもらえるの?
アフターピルは妊娠の不安がある性交後、なるべく早く飲むことが推奨されています。
120時間以内なら効果がほとんど変わらないエラワンも、120時間後の効果は確立していません。
いざアフターピルが必要になったときのため、アフターピルの購入方法をあらかじめ知っておきましょう。
アフターピルは薬局など市販では購入できない
現在国内で承認されているノルレボやノルレボのジェネリック薬は、処方せん医薬品という規制区分です。
そのためアフターピルの入手には医師の処方せんが必要不可欠であり、薬局やドラッグストア・通販サイトでは2021年2月現在購入できません。
個人輸入でアフターピルが買えるとうたうサイトもありますが、自己判断での医薬品購入はリスクが高い行為です。
本物の薬が届くとも限りませんし、必要な日までに届く保証もありません。
大切な自分の体を守るためにも、アフターピルは正しい方法で入手しましょう。
アフターピルは医療機関で処方が可能
アフターピルは、病院やクリニックで処方してもらえば入手できます。
多くの婦人科で取り扱いがありますが、受診前に問い合わせると安心です。
万が一のことを考え、事前に近くのどの病院で処方してもらえるか調べておくと良いですね。
婦人科のほか、内科・形成外科・皮膚科などでも取り扱っている場合があります。
アフターピルはオンライン診療でも処方してもらえる?
コロナウィルスの流行を機にオンライン診療も身近になってきました。
オンライン診療はLINE電話などを使い、医師の診察を受ける方法です。ネットで診察を受けたあとは薬が自宅まで郵送されるので、薬局に行く手間も不要です。
24時間365日対応可能なクリニックもありますし、薬も最短で翌日には到着します。
性交後120時間後まで服用可能なエラワンを扱っているクリニックもあるので、状況に合わせて活用しましょう。
まとめ
アフターピルを飲むことで、避妊に失敗しても妊娠を避けられる可能性があります。
ただアフターピルの避妊効果は100%ではないので、妊娠を望まないなら日ごろから正しい避妊方法を選ぶようにしましょう。
コンドームの使用など他の避妊方法と併せて、毎日ピルを飲むことで妊娠の確立を限りなく下げられます。
万が一のときには緊急避妊という選択も選べるように、アフターピルの知識を持っておくことが大切です。
参考文献:
個人輸入する医薬品等は、危険・ニセモノである可能性があります
[最終更新日:2021年2月12日]